コミュニケーションの手引き

1 食と農のリスクコミュニケーションハンドブック

食と農をめぐるリスクについて、コミュニケーションデザインの思想、具体的なイベントデザインの技法、北海道における取り組み事例を整理しています。

食と農のリスクコミュニケーションハンドブック
(北海道大学, 2017)

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・あとがきより

1  問題Pは明確な輪郭をもってあらかじめ世界Wに存在しているわけでは ない。窓から世界Wを眺めても、問題Pがごろりと転がってはいない。 何らかの手続きを経て構築されなければならない。手続き次第で、問題 Pの色も形も変わる。だれがそれを構築すべきか。

2  構築された問題Pを、そのままの形で解くことは難しい。前提と対象を限定した解きやすい問題 P1、P2、…Pn に分解される。しかし、分解の仕 方は一通りではない。その過程で重要な要素が見失われ、意図的に隠されることもある。問題Pの分解はだれが行うべきか。

3  分解された問題 P1、P2、…Pn は、専門家が解く。それでうまくいくことも多いが、ときには、専門家の間で意見が割れることもある。問題 Pn に 対する解 Sn が一意に決まらない。割れた解 Sn をどう受けとめるべきか。

4  分解された問題に対する解を縦に並べてみても、もともとの問題Pの解 Sが直ちに導かれるわけではない。S1、S2、…Sn を組み合わせて、問題 Pに対する解Sを構成しなければならない。では、どうやって?

5  解Sを手にしたとして、それを世界Wに適用してうまくいく保証はどこにあるのか。うまくいったかどうか、だれが検証するのか。解Sを適用した結果、世界Wに害がもたらされたとき、関わった人たちはこういう かもしれない。「それは、想定外でした。」

だから、コミュニケーションなのです。(白根純人)

2 リスクコミュニケーション案内

多様なリスクコミュニケーションについて、基本概念を整理し、先行事例や有用なツールを紹介しています。

・あとがきより

発明や発見をした好事家たちのおしゃべりや手紙のやり取りが、 ジャーナルや学会へと変質し、社会の中で制度化されてきた歴史 の中で、科学はいつもコミュニケーションとともにありました。

われわれは世界を「理解」するときに、世界そのものとたった一 人で向き合っているわけではなく、他者とのコミュニケーション を通じて、仮説的、暫定的に世界像を構成しているに過ぎません。

グローバル化とともに問題が国境を越えて複雑化する一方で、専 門分野の細分化、高度化が進む現代社会では、さまざまな場面で、 個々の専門知では解決できない問題が現れ、分野や社会的な立場 を越えて多様な人々が参加するコミュニケーションが求められて います。科学とてその例外ではありません。

コミュニケーションは、科学にとって本質的であり、現代社会共 通の課題でもあるのです。 この案内をお読みくださった方が、次の一歩をさくりと踏み出さ れることを祈って。(白根純人)

3 科学コミュニケーション案内

国立研究開発法人科学技術振興機構科学コミュニケーションセンターにおける調査・研究活動をまとめ、科学コミュニケーションの基本的な考え方や具体例を紹介しています。

・あとがきより

科学技術と社会の問題は、個々の問題の解決が困難であるという以前に、「科学技術と社会」という言葉自体がすでにやっ かいです。

なぜ「科学技術」であり、「科学」ではないのか。「科学と技術」ではなく、「科学・技術」でもないのか。これらは、し ばしば混同されつつも、歴史的、社会的な文脈の違いによって、使い分けられています。

とりわけ日本では、「科学技術政策」という言葉が用いられるようになった歴史を理解しなければ、言葉の混乱から抜け出すことはできません。

また、「科学技術」とひとことで言っても、専門分野が細分化され、分野ごとに考え方、方法、言葉遣い、常識が異なるなかで、特定の分野で学位を取り、長期間にわたり研究活動を行っているからと言って、科学技術一般について理解できるわけではありません。

「科学技術と社会」という表現に含まれる「科学技術」は、個別の専門分野の寄せ集めとして理解できるものではなく、 科学史や科学哲学といった、科学技術そのものを対象とした研究の力を借りなければ、問題解決につながる理解は得られないでしょう。

社会についても同様です。人は社会の中に生まれ落ち、社会の中で育ち、社会の中で生きている。一度たりとも社会の外に出たことがないため、多くの人は社会について知っているつもりになりがちです。

しかし、そうではありません。科学技術と同様に、いやそれ以上に、社会学や政治学、現代思想などのさまざまな人文学、 社会科学の研究を無視しては、社会について理解することはできません。

では、これらをすべて理解してからでなければ、科学技術と社会の問題を考えることは許されないのか。そうではありません。

すべてを理解しないまでも、科学技術や社会という言葉をわかりきったことと思わず、ときに疑いを持って考え直し、 他者の言葉に耳を傾けることが必要なのです。

自分の知らない何か大切なものが世の中にあるかもしれない、という謙虚さを持つこと。そこではじめて、科学技術と社会の問題を考えるスタートラインに立つことができます。(白根純人)

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